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昨夜、りゅうちゃんの故郷からの帰りに、お好み焼き食べた。
有名店とかってわけじゃなかったけど、あるとこにはあるみたい。
でもゆか、ぜんぜん味とか覚えてない。一生懸命食べたけど、頭んなかがそれどころじゃなかった。
りゅうちゃんの故郷が怖くて。
あのあと、一通り掃除して、りゅうちゃんのご両親が眠っているらしきお墓に、結婚報告とお墓参りをして帰ってきたけど、ゆかもう、なにがなんだか。
帰りの車んなかでずっと考えてたのは、りゅうちゃん一体何人なんだろうってこと。それからあそこは一体何なんだろうってこと。
ゆか、りゅうちゃんと結婚してうまくやっていけるのかなあ。
別に、りゅうちゃんが悪い人とかそういうの全然ないよ。
ただ、あの場所見たら、驚いちゃって、プチパニックになっちゃったんだ。
頭も心もめちゃめちゃ動揺してたんだけど、なるべくりゅうちゃんに悟られないように平静を装ってたよ。そのへんは普段の仕事の技だとほめて。
でね、いまゆか、ネカフェにいるの。ホテルの近くにあってくれて助かったよ。
りゅうちゃんが、昨日お供えの花を買い忘れて行ったから、今日もあの村…地下の洞窟に行くって言ったんだけど、ゆか嘘ついて、行かなかった。
お腹がいたいからホテルで休んでいいかな?って聞いたら、心配してくれて一緒に居ようか?とか言ってくれたから、罪悪感がすごかったけど。
ごめんねごめんねりゅうちゃん。
りゅうちゃんは何も悪くないの。
ゆかの心と頭がなにかスッキリしないだけで。
だから、こんな気持ちがうやままのまま結婚とか出来ないかもって思って。
今日は一人でちょっとやりたいことがあるんだ。
ゆかの心にある、りゅうちゃん、の村のことをスッキリ解決させる!
この猜疑心を晴らすぞ!
というわけで、昨夜寝る前にいろいろ聞いたことをメモって来たんだ。
お酒が入ったりゅうちゃんは、半分寝かけながらもちゃんと答えてくれた。お掃除して疲れてたんだね。
ゆかはお肌のお手入れするフリして、手帳に書き込んでたの。
えっとまずは、あの村の名前ね。
「外塚」っていう村らしい。ネカフェの個室でさっそくサーチ。
「外塚」って地名は…ない!
高尾市朝日町外塚…ってハズなんだけど、ないや。
廃村っぽかったからもう住所が存在しないのかな?
グーグルアースで見てみたけど、山しか映し出さないし、これじゃあ調べようがないわ。
広島の歴史みたいなの調べたほうがいいのかな。そうすればあの村がなぜあんな寂しくて隔離されたような場所にあるのかわかるかもしれない。
なので予定を変更して市役所みたいなところにも行ったんだけど、閉まってたよ。そういえば連休じゃんかーもう。で、一応すれ違う人たちに聞いてはみたんだけど、誰に聞いても「外塚」とか知らないって言われたの。あんまり古い村とかは記録に残っていないんじゃないかねえー、とかも言われた。
んもう~。これじゃどうやって調べたらいいのかわかんないよ。
りゅうちゃんが昨日言ってた言葉が引っかかるんだよね。「鬼に追い出されたから、あそこにあるんだよ」って「外塚」のこと言ってた。
そんなの信じられるわけないじゃん。
鬼とか、って童話の中の話でしょ。
でも、実際あの山奥で暮らしてたりゅうちゃんたち。
だからひっかかる。
ゆかがあんまりしつこく尋ねたら、なんか、言いたくなさそうな、言いにくそうにごまかされたし。
りゅうちゃんって、一体…。
うーん。なんかこれじゃあゆか、まるで興信所の人みたいだね。
りゅうちゃんのことけっこう知ってるつもりでいたんだけどなあ。
って、いまは感傷に浸ってる場合じゃないや。
えっと、地図で調べたら、あの「外塚」に近い町があるみたいなの。
そこにいけば何か聞けるかもしれない。
一時間に一本バスが走ってるみたいだから、うまくすれば、りゅうちゃんが帰ってくる前にゆかが先に戻れるかもしれない。
もしりゅうちゃんに怪しまれたら「具合が良くなったから後を追いかけた」って言えるしね。
なんとかなるかな!
ってことでさっそくバスに乗車。
知らない土地でバスに乗るのって、東京でもめっちゃ緊張するんだよね。
行き先が不安だし、たまに間違ったバス乗っちゃうし。
でも今日はそんなこといってられない雰囲気だった。
運転手さんに聞いて、ちゃんと確かめてから乗ったし、大丈夫だった。
いつもは人見知りするのに、今日はしなかった。
バスに乗って落ち着いたら、あらためて緊張してたけど。
自分で、自分のやってることに、驚いてた。
「外塚」に近いはずの「朝日町」の「東谷集会所前」っていう停留所で降りた。
帰りのバスの時間をチェックする。
ここにいられるのは、45分間。
さっそく手当たり次第に、見かけた人に声をかけまくる。…つもりが、人なんてみあたらない。
当然だよね。連休だもん。おまけに土地勘もないし、どの辺に人が多く住んでるかとかわかんないよ。
仕方ないから人影を探して歩きまわる。
どうかりゅうちゃんがこの辺にいませんように…。
居たら居たで「言い訳」は用意してあるけどね。
もし。
もしもなにも情報が掴めなかったらどうしよう。
りゅうちゃんと結婚して、いつかゆかが死んだら、ゆか、あの地下の洞窟のお墓に入れられちゃうのかな。
あんなとこいやだ。
やだよ。
りゅうちゃんには悪いけど、あの場所はやっぱりちょっといや。
じめじめした地下のだだっぴろい空間。大空洞。
大昔の村の住人が手作業で掘ったって…。
掘っていたら、偶然発見したんだっけかな。繋がったとか、なんとか。
しかも一つや二つじゃないらしい。
ハッキリとは聞いて無いけど…。
あそこにあったすごい数のお墓。
いったい何年、ううん、何百年前からある村なんだろう。しかも記録にないなんて。
あんなにすごければ、観光地…はバチあたりかな。でも鍾乳洞みたいにすごいんだからなにか記録はありそうなものなんだけどな。
そんなこと考えながら歩いていたら、牧場って書かれた看板見つけた!
牛がいるはずだから、無人じゃないかもしれない。きっと人がいるはずだよね。連休だけど、牛をほったらかしにするはずはないし、と期待して向かった。
途中、足が震えてきた。
誰か人がいて、「外塚」のことを知っていて、その事実をもし聞けたら。
解決するのかな。この胸のもやもやは。りゅうちゃんが昔に何か悪いこととかして、あんなとこで隠れて暮らしてた、っていう理由以外ならなんでもいい。
あの村は、きっと、過疎のせいであんなになっただけだよね?誰かそういってよ~。
りゅうちゃんは教えてくれないんだもん。
でも期待通りにはいかなかったよ。
その牧場、とっくに閉鎖されてて、人どころか牛もいなかった。
がっくりしたのと同時に、何故かすこしホッとしちゃったんだあ。
ゆか、何もしらないままでいいのかなあ、って思った。
あれは掘り下げちゃいけない部分なのかな。
話したくなさそうだったけど、りゅうちゃんが教えてくれる範囲のことだけで納得していればいいのかなあーって。
でね、帰ろうとしたとき、遊んでる子供みつけちゃったんだ。
大人じゃなくてよかった、って思っちゃった。
一人でなにしてるの?って話かけたら驚いてどこか行きかけたけど、戻ってきてくれた。
子供に嫌われるとちょっとショックだよね。
人見知りしてるみたいだったからゆかからどんどん話しかけてみた。
子供のモデルさんとお仕事するときに、いつもやってるみたいにね。
そしたらその子も打ち解けてくれたみたいでいろいろ話してくれるようになったの。
その子は友達がいないから今一人で遊んでるんだよって教えてくれた。
ちっちゃくてかわいい子だった。ところどころ水で濡れてたのは、水遊びしてたのかなあ。スカートと髪が少し濡れて寒そうだったよ。
そんなちっちゃい子が知るはずもないだろうけど、何気なく尋ねてみたの。
「外塚」って知ってるかなあ?って。
そしたらその子、頷いたの!
は?まじなのかな。
この町の歴史にも残っていないような事をなんでこんなちっちゃい子が知ってるわけ!?
からかわれてるんだろうと思った。
あ、でももしかしたら、おじいちゃんとかおばあちゃんとかから、聞いたことがあるのかもしれない!それだ!
そういうことだよね。
うん、どうやらそうらしく、家族が知っているっていった。
教えてくれるかな?って聞いたら、なんかもったいぶって、お友達になってくれるなら、ってかわいいこと言ってきた。
もう全然Ok!
ゆかなんかでよければなってあげるよ~。
でもその子は更にもったいぶって、明日家につれてくから、明日またここに来て、って言い出したの。明日じゃないと無理っていうんだ。
う~ん、困ったなあ。明日はどうなるかわかんないんだよね。
明日、こっちを出て東京帰る予定なんだよね。
なんとかりゅうちゃんにお願いして、帰る前にここにつれてきてもらえるかなあ。
明日はちょっと無理かもしれない、って女の子に伝えると、すっごい寂しそうな顔したから焦った。
でも、なんとか来られるように努力するよって、指きりげんまんした。
そうだ。
「外塚」のこと、ちゃんと知りたいから、そうするしかない。
りゅうちゃんにバレないようになんとかするしかない。
またここに、この牧場に来る「理由」も、バスでホテルに帰るまでに考えておこう。
帰りのバスの中、考えてた。
後でこのブログを読み返すときには、きっと笑い話になってるよね?
明日の夜には「疑ってごめんね、りゅうちゃん」って言えてるよね?
きっとそうだよね?
りゅうちゃん。